極東精機製作所 ― 技術とデザインの融合で次の時代を切り拓く

株式会社極東精機製作所は、1948年、東京都大田区で生まれた町工場です。


創業者の鈴木福男は、戦後復興期の日本で「ただの部品加工屋で終わらない」という強い信念を胸に、旋盤加工による金属部品づくりを始めました。

自動車や産業機械向けの部品製造に取り組み、鋳物や鍛造といった複雑な形状を得意とすることで、早くから高い評価を確立。
それが、極東精機製作所の“精密加工の原点”となったのです。


創業から精密加工技術の確立へ

1968年、有限会社 極東精機製作所として法人化。
防衛や鉄道、油圧機器などの分野へと進出し、産業インフラを支える部品製作を拡大していきました。

1980年にはNC旋盤を導入し、自動化と高精度加工の体制を整えます。
そして1981年、株式会社へと改組。1980年代後半には新幹線関連部品や偏心軸(クランクシャフト)の加工を手がけ、精密旋盤加工の分野で確かな信頼を築き上げました。

1991年には、本社に隣接する地に第二工場を建設。
大型旋盤や長尺加工設備を導入し、二代目代表取締役・鈴木健一のもとで経営の近代化を推進します。
さらにマシニングセンタの導入により、複合加工の体制を確立しました。

この頃、防衛や半導体製造装置といった国家基盤産業への供給も始まり、極東精機製作所の技術基盤はさらに高度化していきます。


人材育成と地域連携による組織づくり

2000年代に入ると、人材育成が会社の中心テーマとなりました。
2006年には技術研修生制度を導入し、技能継承と若手技術者の育成に力を注ぎます。

地域との連携も積極的に進め、2014年には地元高校とのインターンシップ制度を開始。
町工場が教育の現場となり、次の世代のものづくり人材を育てる取り組みとして高く評価されました。


三代目体制の始動と自社ブランド開発

2014年、三代目・鈴木亮介が経営に加わります。
2017年には専務取締役に昇格し、設計・デザイン・ブランド開発を社内に導入。

これまでのOEM中心の事業から、自社製品開発への転換を本格的に進めていきました。
同じ年、テレビ東京『ガイアの夜明け』の“金の卵”特集で若手経営者として紹介され、町工場の新たな挑戦として注目を集めます。

2018年には自社ブランド製品「Facepointer」を発売。


美容・健康市場へ初進出し、精密加工技術を応用した高品質な美顔器として大ヒットしました。
累計販売数は20万本を突破。フランス・パリの老舗百貨店「ル ボン マルシェ」で常設展示され、美容誌『VOCE』の月間コスメランキングでは第1位を受賞。
町工場発の製品としては、異例の成功でした。

この成果をもとに、「Baryon Tokyo」や「Tribellla Tokyo」などの自社ブランドを次々と展開。
“下請けからブランドメーカーへ”――そんな企業変革を実現したのです。


生産・開発体制の強化と評価の獲得

2020年代に入ると、さらに設備投資を加速させます。
2020年にはメディア「TOKYOものづくり部」で、多領域に挑戦する町工場として紹介されました。

翌2021年、鈴木亮介が代表取締役社長に就任。
安久工機との業務提携を実現し、生産キャパシティを拡大するとともに、新設備の導入で効率化を進めていきます。

2023年には五軸加工機を導入し、新拠点「テクノコア工場」を開設。

加工キャパシティは2倍、開発キャパシティは3倍に拡大。
工程統合と自動化により、リードタイムを30%短縮するなど、大幅な生産改革を成し遂げました。

2024年にはスイス式自動旋盤やガントリーローダー旋盤を導入し、自動化・無人化ラインが本格稼働。
その成果が評価され、同年、東京都商工会議所主催の「勇気ある経営大賞」優秀賞を受賞します。
技術力と経営革新の両面で高く評価される企業へと、極東精機は成長を遂げました。


ロクイチとの協業と新ブランド戦略

2025年、バイクパーツメーカーロクイチ(代表:岡谷雄太氏)との共同開発による「Tribellla Tokyo」を発表。


女性ライダー向けのラグジュアリーパーツとして注目され、大手販売会社「東単」との取引も始まりました。

この協業には、創業者一族の縁も深く関わっています。
創業者の弟であり、SP忠男の創業者でもある鈴木忠男が、かつて極東精機製作所で働きながらバイク活動をしていたのです。
その流れを受け継ぐ、新たな形の挑戦となりました。

同じ年、新ブランド「Baryon Tokyo」も正式に始動。
テレビ東京「TV TOKYO+」の特集で“工業製品を美のジュエリーへ”と紹介され、
金属加工とデザインを融合させた新しい表現技術が高く評価されました。

極東精機製作所のものづくりは、ついに“機能と美の両立”という領域へと到達したのです。


次世代工場と未来構想 ― Plus Ultra Factory in TOKYO

現在、極東精機製作所は本社工場の拡張を進めています。
延床面積を350㎡から1000㎡へと広げ、安全性・環境配慮・DX対応をすべて備えた次世代型工場を目指しています。

防衛、半導体、新幹線、油圧機器、美容、カメラ、バイク――。
さまざまな産業を横断的に支える「総合ものづくり拠点」としての機能を持たせる計画です。

そして2026年からは、「100億円企業計画」が始動。
自社ブランド事業とOEM・ODM事業を統合したプラットフォーム「Plus Ultra Factory in TOKYO」を展開し、
日本発の“高付加価値ものづくりブランド”として世界市場を見据えています。


技術と文化の融合を目指して

極東精機製作所の強みは、国家基盤を支える防衛・半導体といった精密BtoB分野と、
人々の心を動かす美容・デザイン・ラグジュアリーといったBtoC分野を両立していること。

理性と感性、産業と文化、技術と美意識――。
その相反する要素を同じ工場の中で実現していることこそ、極東精機の真の魅力です。

創業から77年。
「速さこそ正義」「町工場の誇りを世界の美しさへ」。

極東精機製作所は、技術とデザインを融合させた新しい日本のものづくりモデルとして、
これからも次の時代へと挑戦を続けていきます。